卒園式

三月。三年間通ったさくらをいよいよ旅立つ日。
昨年、長男の卒園式当日は、親子共々言い知れぬ高揚感、緊張感、寂寞とした想いが混然と一体となって、心身ともに気持ちが高まった状態で迎えました。

卒園に向けて、年長さんは1月の終わり頃から、お人形作りを始めます。年少さんの頃から針に糸を通して縫物や、のこぎりで木を切って車やカメラなど、自分のイメージした物を形作ってきた子どもたち。この時期、年長さんは、小学生になることへの不安な想いやさくらを去ることへの寂しさなど、気持ちが揺れ動きます。そのような時に、このお人形作り、息子にとって、心の支えであり、また、一針、一針こころを込めてお人形を作る過程は、一時、そこにとても集中するので、無心になり手を動かすことで気持ちが落ち着くようでした。全身全霊をかけて作ったお人形さんは、息子にとって自分の分身ともいえる存在で、卒園した今でも大切にしています。

卒園式では、年長さんひとりひとりがお人形さんを紹介する場面があります。この時に親は初めて我が子が一生懸命作ったお人形さんと対面します。息子が先生や保護者、在園のお友だちの前で、自分の言葉でお人形さんを紹介し、小学校に入って頑張りたいこと、将来の夢を話す姿は、とても逞しく成長したなと、深く感動をして胸が一杯になりました。

さくらでの縦割り保育で自分たちよりも年上のお友だちや年下のお友だちと過ごした中で、人として一番大切なこと、相手を思いやる心、困っている人に手を差し伸べる優しさ、自分の気持ちを伝える勇気、素直にごめんなさいと謝る誠実さなど、目には見えませんが自分の気持ちと相手の気持ち、この二つの気持ちを大切にする心が育まれたことは息子にとってかけがえのない財産になったと思いました。

シュタイナー教育の提唱者であるルドルフ・シュタイナーは
「人生は植物と似ている。種一粒に未来が全て含まれている。」と語っています。
幼児期である息子という一粒の種は、まだどのような花が咲くのかは分かりません。今は、しっかり土壌に根を張りお日様の光を浴びて栄養を吸収しています。
さくらから巣立った子どもたちは、一粒の種から芽が出てぐんぐん茎が伸びてやがて見事な花を咲かせることでしょう。
       

(’19チューリップママ)